CFRP試作型における構造設計の考え方
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のオートクレーブ成形では、製品形状だけでなく、成形作業性やコストにも配慮した型設計が重要になります。
当社で製作するパールボードやアルティボードなどのケイ酸カルシウム系ボード型では、大きく「一体型」と「分割型」の2種類の構造があります。
一般的には「抜ける形状なら一体型、抜けない形状なら分割型」と説明されることが多いですが、実際の試作開発ではそれだけではありません。
品質・コスト・作業性まで考慮すると、あえて分割構造を採用した方が有利なケースも少なくないからです。
一体型の特徴
一体型は、1つのブロック材から削り出した成形型です。
アンダーカットがなく、一方向から脱型できる形状に適用されます。
メリット
- 高い表面品質:分割面(パーティングライン)がないため、製品表面に継ぎ目が転写されません。外観品質が重視される部品で大きな強みになります。
- 真空漏れリスクが低い:合わせ面がないため、型構造に起因するリークリスクを最小限に抑えられます。
- セットアップが容易:成形時に型を組み立てる必要がなく、作業時間の短縮とヒューマンエラー防止につながります。
デメリット
- 形状に制約がある:アンダーカットや複雑なダクト形状など、一方向に抜けない製品には適用できません。
- 材料・加工コストが増える場合がある:L字や深い箱型のような形状では大型ブロック材の大部分を削り捨てることになり、材料費・加工費の両面で非効率になります。
分割型の特徴
分割型は、複数のパーツを組み合わせて構成する型です。
アンダーカット形状や複雑な内部形状を持つ部品に広く使用されています。
メリット
- 複雑形状に対応できる:インテイクダクトや内部流路を持つ部品など、一体型では成立しない形状にも対応できます。
- 積層作業性が向上する:分割した状態でプリプレグを積層し後から型を合わせることで、奥まった箇所や狭いコーナーへの作業性が大幅に改善されます。
- 加工性を向上できる:各パーツを加工しやすい向きで製作できるため、小径工具による長時間加工を減らしマシンタイムの短縮につながります。
デメリット
- パーティングラインが発生する:合わせ面は必ず存在するため、製品側に線状の跡や樹脂溜まりが残り、後工程での仕上げが必要になる場合があります。
- 高度な調整作業が必要:表面処理工程でのわずかな寸法変化を見越した合わせ面調整(すり合わせ)には、熟練した技術と工数が必要になります。
実務では「あえて分割する」こともある
一般的な解説では「抜けるなら一体型、抜けないなら分割型」と説明されがちですが、実務における試作型製作ではもう一つの重要な視点があります。
それは、「一体型でも抜ける形状だが、あえて分割型にした方がトータルコスト・工数で有利になるケース」です。
- 材料費の削減:大型ブロック材の大半を削り捨てるような形状では、分割構造にすることで必要最小限の材料で製作できます。
- 加工時間の短縮:深いポケットや細いリブを一体型で加工すると、小径工具による長時間加工が避けられません。分割して加工しやすい向きで製作することで、マシンタイムを大幅に削減できます。
- 表面品質の向上:一体型では手の届きにくい深部でも、分割状態で研磨・表面処理を行うことで、均一な仕上がりと高い離型性を確保できます。
- リスクの回避:垂直面で囲まれた形状は、条件によっては一体型でも成形が可能です。しかし脱型時に型と製品が強く密着するため、高い技術と経験が求められるうえ、型の破損リスクも伴います。こうしたケースでは、あえて分割構造を選択することでリスクを抑えながら安定した成形を実現できます。
もちろん、これを実現するには合わせ面の精度設計や手仕上げによるすり合わせといった技術的裏付けが必要です。
「あえて分割する」という判断は、その技術があってはじめて成立します。
型構造の最適解は、製品ごとに異なる
CADデータだけを見れば、どちらの構造でも製作できるケースは少なくありません。
しかし実際には、積層作業性・脱型・真空保持・耐久性・加工コストといった要素を総合的に判断する必要があります。
当社では単純にデータ通りの形状を製作するのではなく、成形工程まで見据えたDFM(Design for Manufacturability)の観点から型構造を決定しています。
一体型と分割型のどちらが品質・コスト・作業性のバランスに優れるか、これまで数多くのCFRP試作型を手掛けてきた経験をもとに、製品ごとに最適な構造をご提案いたします。
「私たちは型を作る前に、まず成立するかを考えます。」
