CFRPの開発において、「型を作れば製品ができる」と考えられがちですが、実際にはそう簡単ではありません。
CADデータ上では問題なく見える形状でも、実際の成形工程では材料が追従できなかったり、離型できなかったり、積層作業が困難であったりするケースが数多くあります。
このような問題を事前に検討・確認することを、私たちは「成立性の確認」と呼んでいます。
成立性とは何か
成立性とは、設計された形状が実際の製造工程で問題なく製作できるかを確認することです。
特にオートクレーブ成形では、以下の点を事前に検討する必要があります。
- プリプレグの積層が可能か
- 真空引きが確実に行えるか
- 離型できる形状か
- 型構造として成立するか
- 寸法精度を確保できるか
3Dデータ上では問題なく見える形状でも、製造現場では成立しないことがあります。
成立性確認の主な項目
① 離型できるか
型から製品を取り外せるかどうかの確認です。
アンダーカット(抜き方向に対して引っかかる形状)があると、一体型では離型できません。分割型や中子(コア)の設計が必要になります。
離型不可の形状を見落としたまま型を製作すると、成形後に製品が取り出せなくなります。
② 積層作業ができるか
プリプレグを型面に沿って貼り込む作業が、物理的に成立するかの確認です。
型の深さ・壁の傾斜角度・内側の角のRなどが積層作業性に大きく影響します。深すぎる形状や急傾斜の面では、プリプレグが浮いたり、シワが発生したりすることがあります。
③ 真空引きが成立するか
バッグフィルムを型全体に被せ、内部を真空にする工程が成立するかの確認です。
複雑なダクト形状や閉断面形状では、バッグフィルムの施工が難しく、真空漏れのリスクが高まります。バッグフィルムが型形状に追従できない箇所があると、成形圧力が均一にかからず、品質不良の原因になります。
④ オートクレーブ工程で問題がないか
加熱・加圧に対して型構造が耐えられるかの確認です。
型の固定方法・熱の伝達効率・型と製品の熱膨張差なども確認対象です。特に大型型や複雑分割型では、熱による変形や位置ずれが品質に影響することがあります。
よくある成立性の問題
アンダーカット
製品としては成立していても、型から取り出せない形状があります。
分割型にすることで対応できる場合もありますが、型費や作業工数が大きく増加します。
極端に狭いダクト形状
自動車や二輪部品では、内部ダクト形状が複雑になることがあります。
積層作業が困難になったり、真空バッグが追従できなくなったりするため、形状変更が必要になる場合があります。
シャープな角部
CFRPは金属板のように自由に曲げられる材料ではありません。
角部のRが小さすぎると、繊維の浮きやシワの発生原因となります。設計段階でのR設定が、成形品の品質を大きく左右します。
過剰な分割構造
成立性を考慮せずに設計が進むと、型の分割数が増え、製作コストや成形工数が大きく増加する場合があります。初期の設計段階から型構造を意識することで、不必要な分割を避けることができます。
成立性検討の重要性
型製作開始後に問題が発覚すると、型の改造・製品形状の変更・納期遅延・追加費用の発生につながります。
そのため、できるだけ早い段階で成立性を確認することが重要です。
特に試作開発では、型製作前の数時間の検討が、後工程での数十時間から数百時間の手戻りを防ぐことも珍しくありません。
当社の考え方
当社では、単に図面通りに型を製作するだけではなく、長く蓄積してきたCFRP型設計の経験を活かし、成立性の確認を行ったうえで型製作を進めています。
特に複雑なダクト形状・深いアンダーカット形状・分割型構造の検討を得意としており、設計段階からご相談いただくことで、製品品質・納期・コストの最適化をご提案できます。
この取り組みを私たちは「成立設計(DFM:Design for Manufacturability)」と呼んでいます。成立設計は、設計段階での手戻りを防ぎ、試作のリードタイム短縮とコスト削減に直結します。
お問い合わせ
「この形状は本当に成形できるのか?」「型は何分割になるのか?」「もっと製作しやすい方法はないか?」
そのような段階からお気軽にご相談ください。
